わんこの飼い主さんならば、当然のように予防して頂いているフィラリア症。
正式には「犬糸状虫症」といって、蚊に吸血されることで感染します。
「犬」と付くくらいだから犬の病気なんでしょ~,と思われがちですが、実は猫にも感染報告が増えてきています。
猫にフィラリアが感染する流れは以下の通り。
①蚊に吸血される際に、一緒にフィラリアの幼虫が体内に入ってくる
②皮下組織をゆっくり進みながら成長
③血液の流れに乗って、心臓経由で肺に移動
④肺にいられないくらいに大きくなると心臓に戻る
あくまでも犬に犬に寄生するのが本来の姿なので、猫に感染したフィラリアの大半は③の過程で自然に死滅していきます。
ですが、死んだフィラリアの虫体は肺で重度の炎症反応を引き起こします。
たまたまうまく生き残った虫が育ってしまい④の段階まで進んでしまうと、言わずもがな重度の心不全症状を引き起こします。
主な症状としては咳、息切れなどの呼吸器症状(犬糸状虫随伴呼吸器症状:HARD)に加えて、食欲低下、嘔吐、体重減少といった肺とは関係なさそうなもの、そして突然死があげられます。
この病気のやっかいなところは、診断がかなり難しいこと。
犬ではフィラリアの抗原検査キットが使えますが、猫では寄生数が少なく診断には使えません。
レントゲンでも、喘息や細菌性肺炎との見分けがつかないことが多く、我々獣医師も初めからフィラリア症を疑うことはまずありません。
そして、フィラリア症になってしまった場合の確実な治療法も、現時点では確立されていません。
呼吸器系の治療として抗炎症治療を一生涯続けなければならないケースもあれば、何の症状も示さず突然死した後に剖検で初めてフィラリアが見つかるケースもあります。
こんな厄介な感染症ですが、背中に滴下するタイプのスポット剤を用いて簡単に予防することができます。
ここで重要なのが、予防を行うタイミング。
予防薬が有効なのは、①と②の段階の幼虫に対してだけなので、毎月1回の予防が重要となります。
具体的には、恵庭周辺であれば5月後半に蚊が飛び始めたタイミングから10月後半ごろまで、毎月1回の予防を行えばまず心配はないでしょう。
当院ではフィラリアと同時に、ノミ、ダニ、消化管内寄生虫もまとめて駆除できるスポット剤をご用意しております。
夏の気配を感じたら、猫ちゃんにもフィラリア予防!ぜひご検討ください。